イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

スコットランドの運河:名ばかりではないUnited Kingdom

大ブリテンおよび北アイルランド連合王国。

これが一般に「イギリス」と呼ばれている国の正式名称である。この本でもその慣わしに従っているが、「イギリス」がイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つの“国”の総称であることは、改めて説明する必要もない。

ところが話を運河に移すと「イギリスの運河」といった場合、そのほとんどはイングランドのことを指す。そもそもバーミンガムやマンチェスターを中心に発達したネットワークなのだが、それがイングランドを越えて広がることはなかった。

現在航行可能な運河として、ポントカサステ水道橋のあるスランゴスレン運河は確かにウェールズにあるが、これはイングランドから延びた運河の先がちょっとだけウェールズにお邪魔している、という感じでしかない。

ウェールズにはもうひとつ、特異な存在としてモンマスシャー&ブレコン運河がある。ブレコンビーコンズ国立公園の中にあるこの運河は、イングランドのネットワークから切り離されていて、ほかの場所からボートで来ることはできない。わずか56キロの小さな運河の中だけで遊ぶことになる。

炭鉱地帯でもあったウェールズには南部の沿岸都市へ石炭を運ぶタテ(南北)の運河がたくさんあったのだが、現在そのほとんどが航行不能状態。このモンマスシャー&ブレコン運河もかつては海まで通じていたのだが、その一部だけがオープンしている格好になっている。

それに対してスコットランドには大きな運河が2つある。ひとつはエジンバラとグラスゴーを結ぶユニオン運河とフォース&クライド運河、もうひとつはカレドニアン運河である。

ところがこの2本、イングランドの運河からはまったく孤立している上に、お互いリンクもしていない。1艘のボートでクルーズすることは事実上不可能なのだ。

ユニオン運河とフォース&クライド運河。正確には別々の運河なのだが、この2つをつなぐファルカークという場所には大きな高低差があり、かつてはたくさんのロックで越えていた。運河が使われなくなってそのロックも廃棄されてしまっていたのだが、2002年、この場所に船のエレベーター「ファルカーク・ホイール」が完成。ボートを水に浮かせたまま観覧車のようにボートを上下させる画期的な装置の登場で、2つの運河は再び1本につながったのである。

c0027849_16254640.jpg

これはカレドニアン運河の出口。スコットランドの「国旗」、ユニオンジャックとともにスウェーデンの国旗が掲げられているのは、スウェーデンのヨータ運河とカレドニアン運河はともにテルフォードの作品であるため

もう1本のカレドニアン運河は「ハイランド」と呼ばれるスコットランド北部を横断するもので、グレン・コーという大地溝帯に沿ってできた3つの湖━ロッヒー湖、オイッホ湖、そしてネス湖━の間をつないで1つの水路に仕立て上げている。沿岸輸送が困難だった時代、大西洋と北海をつなぐ航路として掘削されたこの運河は、土木技師トーマス・テルフォードの傑作として今でもその存在感を漂わせている。

c0027849_1627194.jpg細かいものを除けばスコットランドには以上2つの運河しかないのだが、運河を管轄するブリティッシュ・ウォーターウェイズ(BW)はイングランドとは別組織。たった2つなのに独立した組織が独立した予算を持っている。議会も紙幣も独自のものを持ち、祝日さえイングランドと違うスコットランドらしいといえばそれまでだが。
写真はユニオン運河のロックキーパー。BWの制服もイングランドと違う

スコットランドで日本人がまず思い浮かべるのはスコッチウィスキーだろう。そしてスコッチの原料や製品の輸送にも運河が使われていた。

たとえば「グレンアルビン」、「グレンモール」というブランドを作っていたハイランド地方の蒸留所はカレドニアン運河沿いに建設されている。南に下ってローランド地方では「ローズバンク」を蒸留していた会社が、フォース&クライド運河沿いに工場を構えていた。

残念ながらこれらの蒸留所は現在すべて閉鎖、もしくは操業停止となっていて、運河との関わりを示すものは、もう何もない。



もっと詳しく知りたい方は『英国運河の旅』をどうぞ!

☆発行者 カナルマニアHP
[PR]
by narrowboat | 2006-02-28 16:30 | エッセイ | Comments(0)