『ウルトラ・ダラー』
2006年 08月 28日
町の中で人々の憩いの場になっている運河。
ところが、国際的な武器取引が運河で行われたとしたら・・・・・?
しかもそれは、世界のパワーバランスを変えてしまうほどの強力な兵器。
NHKの元ワシントン支局長、
あの9.11を刻々と現場からリポートしたことで
お茶の間でも顔なじみとなった手嶋龍一が挑んだ
サスペンス・ノベルである。
ストーリーは現実社会で起こっている事件を下敷きにしているので、
半ばノンフィクション的でもある。
もっともそのあたりの判断は読んだ方にお任せするとして、
ここでは運河の話題にスポットを当てよう。
冒頭のシーンは、
本書ではラストに配置されている第4章「仄暗い運河」。
パリのサンマルタン運河で貨物船に積み込まれた武器が、
そのまま大西洋まで出てある国へ密輸されるシーンだ。
パリから大西洋へはダウンヒルになるようで、
貨物船はロックを1つずつ下がっていく。
手嶋氏のロック通過の表現は、
なかなか的を得ていて、
私も見習いたいくらいである。
ただし、いつものように重箱の隅をつつかせてもらうと、まず「(マイターゲート式水門の)工法は19世紀のフランスで発達した」(p.273)というのはどうか? フランスがうそとは言わないが、いちばん発達したのはイギリスでしょう。なにせ運河の数が全然違う。
それよりも、運河で武器の闇取引など、現実的に可能なのか? 物語では、巨大な武器を積み込んで、出航してからも警察当局は船の居所がつかめていない。しかし、イギリスだろうがフランスだろうが、運河を航行するボートの速度など知れている。ロック通過とでもなれば、そこで船を拘束することなど訳ないからだ。
もっともそこはあくまでフィクション。サンマルタン運河に潜水艦が潜伏していても、物語はそれで成り立つ。
これ以上詳細を書くことはネタバレになるのでやめておくが、
最後があまりにも短絡的、というか端折った感じになっているのは残念。
主人公の恋人は実は敵側の人間だったのでは?
という伏線だけ打っておいてその後もないし、
ラストもなんとなくセンチメンタルに過ぎる。
それから、
敵側に情報を漏洩させていたIT技術者、
彼は途中で突然物語から”拉致”されたまま戻ってこないんですけど・・・・・・。
私も、イギリス運河でナローボートを使った犯罪サスペンスでも書いてみようかな。
『ウルトラ・ダラー』はここで買えます。
安易すぎますかね~?????
目指せ 印税生活!!!!!
モース警部シリーズに
「オックスフォード運河の殺人」
というのがあります。
私だったら童話系の話を書きたいですね!
印税・・・・・・
もちろん入るんですが、
それだけで生活は無理!(TT;
>zuppinaさん
運河での取引はやっぱりむずかしいのでしょうか・・・運河をみる機会がほとんどないので、ピンと来ませんでしたが、現実は難しそうですね。
事後報告になってしまいますが、リンクさせていただきました!
運河での取引・・・・・取引そのものは難しくないですけど、すぐに捕まっちゃうと思います(^^; 時速数kmですから。
>mogumoguさん