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イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
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ヘンデル「水上の音楽」にまつわるお話

ヘンデルという作曲家の名前を一度くらいは聞いたことがあると思います。

J.S.バッハとともにバロック時代の二巨頭と呼ばれるヘンデル。
日本では、バッハに比べると曲の知名度は低いですが、
あの「ハレルヤ・コーラス」を学校時代に歌った(歌わされた?)人も少なくないと思います。

さて、このヘンデル。
バッハと同じドイツ人でしかも同じ歳なのですが、
20代でイギリスに移住し、最終的には帰化してしまいます。

そんなわけで、今でも「ヘンデルはイギリス人」ということにイギリスではなっていて、
呼び方も英語風に「ハンデル」と言います。

ヘンデルの作品の中で、前述の「ハレルヤ・コーラス」と同じくらい有名のが「水上の音楽」。
いくつかの小品を組み合わせた組曲形式で、
その一部は日本でもよく演奏されていますが、
この「水上」とは、テムズ川を指しているのです。

18世紀はじめ、ロンドンへやってきたヘンデルは、その生活ががいたく気に入ってしまいました。
王位にあったアン女王にとてもかわいがられており、
彼女のためにいろいろな曲も献呈したようです。

ヘンデルは、本拠地でもあるドイツのハノーバーにはまったく帰らないという困り者と化していました。

そんなときにアン女王が逝去。
代わりに王位についたのは、なんと故郷ハノーバーの選帝侯でした。

当時のヨーロッパは、各国の王室同士が嫁取り、婿取りでみんな親戚状態。
日本の戦国時代みたいなもですかね?

いずれにしろヘンデルにとっては
ハノーバー選帝侯が「親分」としてやってきたことになります。

これは気まずいでしょう!
ということで、ジョージ1世として即位した親分の機嫌をとるために作曲したのが、
先の「水上の音楽」だというわけ。
1717年7月、ジョージ1世が乗った御座船ご一行がテムズ川に繰り出し、
御伴の船に控えたオーケストラから「水上の音楽」が演奏されます。
ジョージ1世はこの曲が大変気に入り、
何度も何度も繰り返し演奏させたので、
ヘンデルもオーケストラの団員もキレそうのなったとか・・・・・。


以上が数年前までの定説だったのですが、
近年の研究で、ヘンデルがジョージ1世に睨まれていたこともないし、
その見返りに「水上の音楽」が作曲されたわけでもない、
そしてこの曲が何回も演奏された事実はないことが判明したそうです。

こういう有名人のエピソードって後付のことが多いので、
さもありなんではありますが、
王様にビビって作った曲が今は名曲に、
というほうがネタとしては面白くありませんか?

テムズ川と王室といえば、
昨年、エリザベス女王在位60年を記念した大水上パレードが行われました。

このとき、私はロンドンにいたのですが、
パレードはものすごい混雑で、とても潜りこめたものではありません。

言い訳がましいですが、タブロイドの写真でご勘弁ください。
ヘンデル「水上の音楽」にまつわるお話_c0027849_2223311.jpg


このときもきっと「水上の音楽」が鳴り止まなかったんでしょうね。

「水上の音楽」は、こんなサイトでも試聴できます。


イギリスの運河が登場するおよそ半世紀前の出来事ですが、
その頃から、イギリスと水路には密接な関係があったのですね。
by narrowboat | 2013-08-19 22:07 | 雑感 | Comments(0)