”プラスチック”なもの:ナローボートじゃなくてもいいですけどねぇ・・・・・
2005年 11月 24日
運河、川にかかわらず、そのボートが運航できるかどうかはボートのサイズだけがポイント。水路幅はもちろんだが、ロックに入ることができればどんなボートでも構わないのだ。
ところが実際には、プラスチックの船体を選ぶボーターはほとんどいない。運河で営業するハイヤーカンパニーの船もほぼ100%ナローボートだ。プラスチックボートのほうが操作性はいいし、運転席にも屋根があるから雨でも濡れなくて快適。しかも値段は安い。なのに、どうしてナローボートばかりなのか?
それは運河のクルーズが、昔のスタイルをもってよしとするという究極の大人の遊びだからにほかならない。クーラーもないし燃費も悪い昔の車をこよなく愛する人がいるのと同じように。真空管のご機嫌をうかがいながらレコードに針をそろりと落とす人がいるように。理由はいらない。運河の旅とは、ナローボートとはそういうものである。
軽くて操作性のいいプラスチックボートは確かに楽だ。だがそこは「リアル」をもってよしとするボーターの世界、プラスチック製ボートとはナローボートより常に格下に見られている。パワーがあることをいいことに波を立てながらプラスチックが通過しようものなら、
「なんだあのプラスチック野郎は! マナーを知らん奴だ!」
「しょうがないよ、プラスチックだもん」
プラスチックに乗っている人は、ボーターとは別の星に住む異星人だから仕方ないとでも言いたげなのだ。
ところがイギリス全土の水路を眺めると、事情は違ってくる。特に川や湖では様相がガラリと変わり、日本のマリーナでもよく見かけるFRP(強化プラスチック)製のボートの割合が多くなってくる。川や湖で営業するハイヤーカンパニーも、所有するボートがナローボートとは限らない。運河のように細くはないから、ナローボートである意味がないからである。運河でも、スコットランドにあるカレドニアン運河のような広い水路では、「ダッチバージ」と呼ばれる大型はしけや小型プラスチックボート、さらにはヨットが主流だ。
プラスチックのボートの中には、運河と河川、さらに海も自分のフィールドにしている船もある。グローバルに活動するプラスチックに対して、運河の中でしかいばれないのがナローボート。この井の中の蛙的なところに愛しさを感じられれば、あなたも立派なボーターである。
☆発行者 カナルマニアHP