イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
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ワークボート:それでも水運にこだわる理由

イギリスの雑誌販売チェーン店「WHスミス」をのぞくと、実にたくさんの種類の雑誌がそろっているのだが、特徴的なのは乗物雑誌の占めるスペースが大きいことだ。車や鉄道は言わずもがななのだが、船の雑誌もたくさん出ている。
そしてこれもイギリス的なのだが、ナローボートをはじめとした運河・河川のボートの専門雑誌だけで3誌もある。海のボートの雑誌はほかにあるので、船の文化がどれだけイギリスで深く広く浸透しているか、雑誌のスタンドを見ただけでもわかる。

私はその中で『ウォーターウェイズ・ワールド』という雑誌を定期講読している。郵送料を追加すれば日本にも送ってくれるのである。
その『ウォーターウェイズ・ワールド』誌だが、巻頭は運河に関わるニュースで始まる。その中に毎号「運輸と貨物ニュース」のコーナーがあって、運河や河川での貨物の動きをフォローしたニュースになっている。これ、昔日の話題ではなく、現代のニュースなのだ。
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運河には今でも「ワークボート」が浮かんでいる。ワークボートは、同じナローボートでも産業革命時代から運河で活躍していた貨物船のことで、その現物を所有している個人や団体がまだ存在しているのだ。
単に保存してイベントの時だけにお披露目というものもあるのだが、定期・不定期に貨物輸送をしているボートもある。数はほんのわずかで、統計をとっても有効数値に入らないくらいなものだが、それでも細々と営業を続けているのだ。


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実際に運河でいちばん見かけるワークボートは、石炭の袋をたくさん積んだ船。石炭船ならまさにワークボートの起源だろうと思うかもしれないが、彼らが運んでいるのは、運河で遊んでいるナローボートの暖房に使うための石炭。石炭ストーブを使っているマイボートはとても多いので、彼らを目当てに石炭を販売しているのである。
もっとも彼らは、自分たちも好きでボートに住んでいるれっきとしたボーター。石炭販売だけで商売が成り立つのかどうかは不明だが、どうやら水上生活というライフスタイルを選んだのが先で、ビジネスは二の次みたいである。

今も残るワークボートは年季が入っている。船自体がもう文化財といってもいいのだが、それを動かすところに意義を感じているのはイギリスならではだろう。
ペイントやデザインも当時のボートの生き写しで、200年前にタイムスリップでもしたような感じになる。キャビンも「ボートマンズキャビン」という昔ながらの船室を再現していて、“なりきり度”100%という感じだ。

当時のスタイルに固執するボーターは、自分のワークボートを2艘つないで動かしている。ただでさえ積載量が少ないワークボートである、鉄道のようにたくさんつないで運航したほうが効率がよかった。
そこで、前の船「モーター」が後ろの船「バティ」をロープで引っ張るというスタイルが主流となる。これを「モーター&バティ」というが、ボートマン(船頭)一家が家族でボートに暮らしていた時代、夫がモーター、妻がバティのティラーを担当していた絵や写真がいくつも残っている。
男はいいとしてそんな趣味に付き合う妻が今のイギリスにいるとは思えないが、夫婦そろっていなくても、この年代モノの船で輸送に貢献していると自負している熱心なボーターがいることは確かである。


☆発行者 カナルマニアHP
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by narrowboat | 2005-11-28 16:14 | エッセイ | Comments(0)