イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
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トゥパステレグラフ:最新IT機器も敵わない?

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イギリスでも携帯電話は誰もが持っているツールになりつつあるが、ボーターたちはいち早くこの文明の利器に飛びついていた。内陸にあるといっても、運河に出てしまえば連絡が取れなくなるのが船乗りの常。そこへ登場した携帯電話はまさに彼らの救世主。町の人々に浸透するより前から、ボーターの間ではマストアイテムになっていたのだ。

今では、ナローボートの上で携帯電話とパソコンを接続してインターネットを利用することもできるし、そのためのブースターやアンテナの使い方を解説した記事が専門雑誌で特集されるようにもなっている。だが携帯がなかった時代にも、ボーターたちは情報のアップデートに苦労しなかったという。携帯電話やパソコンがなくてどうしてそんなことができたのか? それが「トゥパステレグラフ」という通信手段である。

え!? それってどんな機器? 電波はどうやって飛ばしていたの?

トゥパステレグラフとは、ボーターたちが口から口へと伝えるニュースことだ。係留所で、ロックで、そしてパブで、運河で起こったさまざまな事件や話題が広がっていく。だからトゥパステレグラフには機械もなければ電波も飛ばないのだが、その伝達のスピードは新聞(テレグラフ)並みに早かったのだ。

現在こうやってIT化が進む中でも、ボーターがいちばん信用しているのはトゥパステレグラフである。

「先週あそこのロックで事故があったらしい。フェンダーを扉に引っ掛けたって話だ」

「あのパブ、来週には新しいゲストエールが入るらしいぜ」

世界を揺るがす政治や経済のニュースにはぜんぜん興味を示さない代わりに、運河に関係した話題ならほんの小さなことでも知りたがるというのは今も昔も変わらないボーターの性なのかもしれない。

日本にも「悪事千里を走る」ということわざがあるように、運河での出来事は一瞬のうちにトゥパスを渡る。その速度はナローボートの数倍にも及ぶようだ。

近年、そのトゥパスが現実の通信手段として新たに注目されている。イギリスの通信会社がブリティッシュ・ウォーターウェイズとタッグを組み、トゥパスの下に光ファイバーを埋設しているのだ。国内に広がっている運河網に目をつけた通信会社の機知はたいしたものだが、トゥパスと光ファイバーというまさに新旧のコラボレーションが実現しようとしているのである。

もっともこの光ファイバーはボーターには無関係。彼らはIT時代の今も、トゥパステレグラフにしか耳を傾けていない。



もっと詳しく知りたい方は『英国運河の旅』をどうぞ!

☆発行者 カナルマニアHP
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by narrowboat | 2005-12-16 16:28 | エッセイ | Comments(0)