イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
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『イギリスの近代化遺産』

『イギリスの近代化遺産』

文:田中亮三 写真:増田彰久
小学館

日本で”遺産”というと寺社仏閣をはじめとした「文化遺産」をまず思い浮かべる人が多い。
だが世界で初めて産業革命を成し遂げたイギリスでは、
当時建設された橋、発電所、工場なども立派な遺産として認められている。
もちろん運河もそのひとつ。
これらはまとめて「産業遺産」と呼ばれているが、これらを写真と供に紹介した本が出版された。

私自身、このテーマについてはかねてからやりたいと思っていただけに、
「先を越されたぁ!」
というのが正直なところ。
だが、このようなテーマで本ができるということが証明されたということは喜ばしい。

特に運河研究者としてははずせない土木技術者、
トーマス・テルフォードについて3ページも割いてくれているのは、
他の書物にはないことだ。


さて本書の「運河」の項である。

c0027849_16175417.jpg著者はグランドユニオン運河の有名なワットフォード・ロックとフォックストン・ロック(写真左)の見学に行ったようだ。
ロックの数え方にちょっと問題があるのだがそれはいいとして、
フォックストン・ロックの脇にあるインクラインが
「10年使用されたあと廃業し、現在はレジャー用になっている」
という記述は明らかに間違い。
インクラインは今も使用されていない。

ただ、細かい勘違いなどは無視するとしても、
「現在はエンジンではなくモーター駆動の、静かで排気ガスを出さないレジャー・ボートが盛んに行き来している」(P.120)という記述には、単に取材していないとか、思い違いとかいう以上の問題がある。

ナローボートでの運河クルーズ。
イギリスのカントリーサイドをのんびり往くこのレジャーは究極のエコツアーである。
いや、エコでなくてはならない。
そんな思い込みがあるのではないか。

イギリスの内水面(運河や河川)を航行するボートは、
まだ99%以上が石油系エンジンを使用している。
環境への配慮から、今後は電気モーターを搭載する船が増えてくることは予想されるが、
それも10年単位での話になる。
事実、電気自動車の研究があれだけ進んでいるのに、
実際に道で電気自動車を走っている人を見たことがある人は少ないはずだ。

ブリティッシュ・ウォーターウェイズ(BW)に登録されているボートは約3万5000艘。
BW管轄以外の水域でのボートを合わせても、5万艘には満たないだろう。
このほぼすべてがレジャー用もしくは居住用だから、
実際にエンジンを吹かしている時間はわずかである。
自動車が排出する二酸化炭素などの有害物質に比べれば微々たるものだ。

ナローボート=エコ
という図式を描くのはいいが、
そこまでエコにこだわるのなら、エンジンを使った自動車やバスは一切利用しないのだろうか?
自分が乗らないだけではなく、野菜だって魚だって、トラックで街のスーパーまで運ばれてくるわけだから、自給自足の生活をしているとか?

揚げ足を取るわけはない。
そして、私はこの本の著者を非難しているのでもない。
だが、ナローボートはエコでならねばならない、
という押し付けがましいイメージはいい加減やめて、
ボートの電動化をどう進めていくのか、
具体的なアイディアを出していくべきではないのだろうか。
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Commented by 家主 at 2006-01-19 19:14 x
こんにちは。ブログ、とっても興味深く読ませていただきました。いつか、イギリスにいる友人をけしかけて、ナローボートの旅に挑戦したいと思いと本当に思いました。
Commented by オスオ at 2006-01-20 21:12 x
実は私もこの本は買いました。そして運河の記述で確かに秋山さんの言われているところは「?」と思いました。
やっぱりこれは取材した人が間違えたか、取材が不十分だったか。まぁこの本の趣旨は分かるのですが、やっぱり内容は正確にあって欲しいですね。できることなら続編が出ることを願います。

そして電化=エコというのは疑問です。
電化ということは電力消費量が上がるということで、そうなると発電所の稼動は増えて、発電の際の二酸化炭素排出問題は無視できません。
一番のエコは「手漕ぎ」なのは分かりますが(笑)、電化にするというのはチョッと現実的ではないのでは?と思いました。
Commented by narrowboat at 2006-01-21 21:12
家主さん、ご訪問いただきましてありがとうございました。今年はぜひナローボートの旅を実現して下さいね!
Commented by narrowboat at 2006-01-21 21:16
オスオさん、ご来訪ありがとうございます。おっしゃる通り、発電による二酸化炭素の排出を無視して電化だけでエコを気取るのは片手落ちです。また電化の実現には充電ステーションの整備などインフラの問題もあり、まだかなり先のことになるでしょう。それにしても実際に現場を取材したのなら、なんでボートが電気で動くと誤解したのか不思議でなりません(笑)
by narrowboat | 2006-01-20 16:20 | 運河の本、ビデオなど | Comments(4)