イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
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ボートリフト:水に浮いたまま持ち上げるという奇策

2004年初春、まだ肌寒いスコットランドで私は、友人2人とともに興奮しながら立ちすくんでいた。まだ完成したばかりのボートリフト「ファルカーク・ホイール」にこれから乗ろうというのである。
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ボートリフトとは、水位差の大きい2つの運河の間にある船のエレベーター。水を張った箱にボートを収め、そのまま持ち上げたり下げたりするのである。このシステムはほかの国にもあるが、ファルカーク・ホイールが違うのはボートを垂直に上下させる従来の方法ではなく、180度回転するところだ。その姿は、まさにボートの観覧車というところだろう。

ファルカーク・ホイールでは、軸に対してボートが入る「ケーソン」という箱が点対称に取り付けられ、1つの箱が上昇するとき、もう1つは下降する。まさに巨大なホイール(車輪)だ。その高低差は約25メートル。これだけの高さを船が越える機械は、コペルニクス的な発想の転換でもないと思いつかないだろう。

ファルカーク・ホイールに近づいた私たちのボートは、係員の誘導でゆっくりとケーソンに向かっていく。ボートが完全に入りきると「バリア」という板が水の中から現れ、外部の水とケーソンを完全に遮断。するとほどなくケーソンがゆっくりと動き出す。これが普通の観覧車だったらたいしたスリルでもないが、水を張ったケーソンに浮いたボートがいっしょに持ち上がっていることを思うと、何か不思議な感じがする。上に到着するまで約2分。たった2分ではあるが、それは稀有でファンタスティックな体験だった。

ファルカークは、スコットランドの中心都市エジンバラへ至るユニオン運河、工業都市グラズゴーに向かうフォース&クライド運河のジャンクション。かつてこの間はたくさんのロックでつないでいたのだが、ユニオン運河を再オープンするのに合わせて、新しいボートリフトを建設するプロジェクトが実施されたのだ。

もちろん、こんなハイテクなボートリフトは昔の運河にはない。往時のままに再現することをよしとするイギリスで、これは非常に珍しいことだ。

その一方で、オリジナルそのままに復活したボートリフトもある。リバプールの近郊にある「アンダートン・ボートリフト」がそれだ。

アンダートン・ボートリフトは、1875年、トレント&マージー運河とウィーバー川の間に設置された。ケーソンは2基あり、そのパワーは蒸気。シリンダーの中に蒸気を注入し、1基が下がるとシリンダー内の蒸気がもう1基に押し出されて上がる、というユニークなシステムだった。

ウィーバー川にある化学工場の排水が原因で錆が生じたため、このシステムは電動式に変更されたが、それでも1986年まで生き続けた。だが老朽化で使用不能になり、その後しばらく放置される。それが2002年に復活。現在は、往年と同じようにボートを上げ下げしている。


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ファルカークやアンダートンがボートのエレベーターなら、エスカレーターというのもある。フォクストンにある「インクライン」がそれで、こちらは稼動が停止してから久しく、現在は復活を目指して寄付活動が行われている。
左の写真はインクラインの残骸。これだけ見ると修復なぞ無理そうにも思えるが、イギリスならきっとやってくれるに違いない。

ファルカークとアンダートン。2つのボートリフトは新旧で対照的な存在かもしれないが、本来そこにあった「リアル」な機能を復活させたということでは共通している。インクラインのほうもまた何年か後にはリアルな姿を見せてくれるのだろう。



もっと詳しく知りたい方は『英国運河の旅』をどうぞ!

☆発行者 カナルマニアHP
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Commented by 家主 at 2006-01-31 00:45 x
以前、どこかで、橋の上の水路をナローボートが進んでいる写真を見てびっくりしましたが、これは凄いですねぇ! またまた、びっくりです!
Commented by narrowboat at 2006-01-31 14:51
橋の上の水路・・・・・はこれでしょうか>家主さん
http://narrowboat.exblog.jp/m2005-11-01/#3049884
by narrowboat | 2006-01-30 21:18 | エッセイ | Comments(2)