イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

運河の橋:くぐるだけで歴史が見えてくる

運河に架かる橋には全部番号がついている。道路なら「銀座」とか地名の入った看板が立っているが、運河では橋を使う。橋桁には番号が振ってあって、それを確認しながら自分の現在位置と地図を照らし合わせるのだ。

c0027849_18175384.jpgところがこれがちょっと食わせ物なのだ。橋に番号が付いているということはボーターしか知らない。いや、他の人はまったく興味がない。だから、たとえば途中からボートに乗りたいという人に「○○運河の154番の橋で待ってて」と言っても全然わからない。この番号は道路地図には記されていないので仕方ないが、橋の番号だけを頼りにクルーズしている我々にはそれしか説明のしようがないのだ。

まあ陸から車で来るような人間は放っておいて、私たちはまた橋をくぐっていこう。そうすると、橋の下だけボート1艘分しかないくらい狭くなっていることが多いことに気がつくはず。運河が広ければその分長い橋を造ればよさそうなものだが、そこにはコストの問題があった。石造りが中心だった当時、そんな長い橋をかけるには膨大な金が要求されたので、橋の部分だけ運河の幅を狭め、短い橋桁で済ませた結果なのである。

おもしろいのは「ロービング・ブリッジ」という橋で、スロープでグルッと一周してから上にあがる橋だ。これは馬曳きボート時代の名残で、トゥパスが運河の反対側に移る場所に普通の橋を造ってしまうと、ボートを引っ張っていたロープを一度外して付け替えなければならないのだが、その手間を省くために橋の片方をらせん状にしたもの。ただあまり多くは残っていないので、面倒でもロープを付け替えていた橋がほとんだだったみたいだ。

同じ馬曳きロープ対策として、橋桁の真ん中にわずかにすき間を作るやり方もある。これはストラトフォード運河にあるもので、橋の真ん中が10センチほど割れていて、ここにロープを通す。このタイプの橋がストラトフォード運河には多いが、石ではなく、鉄製だからできた裏技である。

c0027849_1818309.jpg

イギリスの運河は石橋が主流とはいえ、鉄の橋の中にはなかなか見ごたえのある美しいものがある。その代表は、グランドユニオン運河とオックスフォード運河が交差するブローンストンにある鉄橋だろう(写真上)。ここは三叉路になっていて、中の島にレンガ造りの橋桁を置き、その両側から鉄橋が挟む形になっている。どこから見ても鉄橋とレンガのコントラストが映えるような見事なレイアウトで、1830年代にホースリー鉄工所が建設したものだ。

鉄橋でいえば、あのトーマス・テルフォードが設計した橋も見逃せない。テルフォードの橋といえば、運河ではポントカサステ。アクアダクト、そしてウェールズのメナイ海峡にある大吊橋で世界中に知られているが、もっと小さな橋もたくさん手がけている。その作品が集中しているのはバーミンガムで、独特のデザインが施された橋桁の影が運河に映りこんで、これはまたフォトジェニックなのだ。

橋を見ただけでも運河がたどってきた歴史がわかる。それが、イギリスの運河が土木技術の「リアル」なテーマパークであると言われるゆえんでもある。橋の端から端まで、とくとご覧あれ。



もっと詳しく知りたい方は『英国運河の旅』をどうぞ!

☆発行者 カナルマニアHP
[PR]
by narrowboat | 2006-02-11 18:19 | エッセイ | Comments(0)