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イギリスの運河ではナローボートという船を借りて、誰でも免許なしでクルーズが楽しめる。『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『イギリス水辺の旅』の著者が具体的な旅のノウハウを伝授します。


by narrowboat
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ボートでお漬物?

ボートでお漬物?_c0027849_17381722.gif

『キュウリの旅』
島袋道浩
小学館
1600円+税


 「ナローボートを題材にした絵本がありますよ」
 とあるパーティーの席上、そう教えてくれたのは、ライターのYさんだった。
 運河関係の本はほぼくまなく網羅していたと自負(?)していた私にも、Yさんのこの一言は衝撃だった。それも一般書籍ではなく絵本?

 さっそくネットで調べてみたところ、ちゃんとある(あたりまえか)。
 その名も『キュウリの旅』。
 なぜキュウリか?
 ①ナローボートの形がキュウリみたい
 ②船内でキュウリを漬けてピクルスにする
 という2つの理由があるらしい。
 まあ先に「ピクルス」があって、「形」は後付けだろう。
 でも読んでみると、ナローボートの遅さと、キュウリがピクルス化するスピードがちょうど同じ、ということらしい。

 絵本など最近は手にしていない私だが、この絵はどう表現したらいいのだろうか?
 色鉛筆であろう細い線で運河や船内の様子を描いている。
 もしこれが画用紙に描かれていたら、小学校低学年の絵といわれて納得してしまうに違いない。
 一言でいえば「ヘタウマ」。
 だが、そこに魅力があるのかもしれない(私には理解できないけれど(@゜▽゜;A)


 さて、ここからはいつもの「ツッコミ」。

 「作者紹介」によると、
 この物語は「ロンドンからバーミンガムまでボートで旅した」ときに着想されたとある。
 だが写真に映っているボートはアルバチャーチ社のゲイトンGaytonベースのもの。ゲイトンは、おおざっぱに言うとロンドンとバーミンガムのほぼ中間にある場所だから、もし本当にこの2都市間をボートで行ったのなら、いったんロンドン(もしくはバーミンガム)に出てから再びバーミンガム(もしくはロンドン)へ向かったことになる。物理的には可能ではあるが、1ヶ月くらいかかるのではないだろうか?

 ついでに言うと、写真のボート「ゴスホークGoshawk」号は、作者が旅したという2000年7月の約1ヶ月前、私が取材で使ったまさにそのボートである。


 もうひとつ、
 物語ではアクアダクトを通過したことになっていて、写真が2枚掲載されているのだが、うち1枚はポントカサステ・アクアダクト(スランゴスレン運河)なので、ロンドン~バーミンガム間とは地理的に無関係。
 もう1枚は、下に鉄道が通っているところを見るとエドストーン・アクアダクト(ストラトフォード運河)か? もしそうなら、よほど天邪鬼なルートを取らない限り、やはりこのルート上ではない。

 もっとも、
 これくらいの創作はファンタジーの世界だとして許容範囲かもしれない。


 今度私がナローボートに乗ったときは、「ピクルス」に対抗して「しば漬け」でも漬けてみるか。
 ぬかみそ持参?


 この本はここで買えます。


★英国運河通信
# by narrowboat | 2005-09-01 17:41 | 運河の本、ビデオなど | Comments(0)

ボートに持っていくもの

 前回まででルート作りのお話をしました。
 そうなると、もう日本で考えることはほとんどありません。イギリスでボートに乗るというと、入念な準備が必要だと思われている人も多いのですが、細かいことは現地で考えても遅くありません。言い換えれば、ただでさえ遅い上に、ロックや何やらで待たされることも多いのが運河の旅なので、日本であれこれ考えるのは時間の無駄、ということです。
 いや、旅の楽しみは、行って何をやるかではなく、行く前にあれこれ考えることにある。そういう方もいるでしょう。私自身、それには大賛成で、国内の旅行でも出発前に時刻表を見ている時間のほうが楽しかったりします。
 ただナローボートの場合、運河や河川という決められたルートを進むだけなので、日本であまり準備しすぎてしまうと、現地で考えることがなくなってしまいますから(笑)

 もっとも、日本から準備していったほうがいいものもあります。イギリスでは入手困難、または不可能なもので、ボートならではの必要アイテムを今回はご紹介しましょう。

●軍手
 ロック作業やロープを扱うときに重宝します。イギリスでは、私たち以外に軍手(手袋)をしている人を見たことがないのですが、私としてはぜひ持参していただきたい一品です。
 ロックでは、ロックキーで手が痛くなることを避けるということと、ギア(歯車)にこびりついた油から守るということで大活躍。ロープの力で手を切ったりするのも防ぎます。

●携帯電話
ボートに持っていくもの_c0027849_15515112.jpg  今やナローボートの旅では必需品といっていいでしょう。日本でも海外でも使える会社のもの(ボーダフォンなど)をそのまま使ってもいいですし、海外専用の電話を別途購入、レンタルする方法もあります。
 どうして携帯が必要かというと、ボートにトラブルがあった場合、ハイヤーカンパニーにすぐ連絡を取らなければいけないからです。運河のある場所は、ロンドンのような大きな町ではなく、田園地帯が主です。公衆電話までたどり着くには1時間以上歩かなければならないこともあります。
 ここ数年ですが、私たちがハイヤーカンパニーでボートを借りるとき、携帯番号をスタッフに必ず聞かれています。なければ貸さない、ということはありませんが、何かのときの安心料だと考えて、持っていくようにしてください。

●トランシーバー
ボートに持っていくもの_c0027849_15524089.jpg  必需品、とまではいえませんが、あると便利です。
 ナローボートは全長がかなり長いので、船尾で操船している人と船首にいる人の間で会話することは不可能です。特に船尾は床下でエンジンが回っているので、声が全然聞こえません。
 またロック作業をしている人とボートにいる人の間で連絡を取り合いたいときなども重宝します。
 そんなに遠距離で会話することはないので、電波は100mも届けば十分。私たちはオークションで入手したものを使っています。

●懐中電灯
ボートに持っていくもの_c0027849_15533129.jpg 主に夜パブに行くとき使います。トゥパスは暗いので、ぜひほしいアイテムです。そんなに大きなものでなくてもよく、100円ショップで買える程度のもので十分です。ただし電池切れには要注意。
 プロペラの点検をするときも、あると便利です。



●雨具
 これも必需品です。
 私の経験では、1艘に1組はカッパ上下が備わっていますが、1人1組持っていきたいものです。
 カッパは、当然ですが雨が降ったときに使います。ナローボートの操縦デッキには屋根がありませんから、操縦する人1人はかならず濡れることになります。またロック作業があれば、その人にも必要になるでしょう。ボートに持っていくもの_c0027849_15535849.jpg 
 できればゴアテックスなどのちゃんとしたレインウェアがほしいところですが、私はユニクロで買ったポンチョみたいな雨具を使ってます。
# by narrowboat | 2005-08-19 05:38 | ナローボートの旅マニュアル | Comments(0)

GRAFTON(五反田)

 五反田というと山手線の中でも泥臭いイメージがある。
 西口を出て5分も歩くと目黒川を渡る。夕暮れ時は河の向こうにそびえる高速道路もシルエットになって、川とのコントラストはなかなか美しい。ここはもしかしたらイギリスの運河? というイメージを脳裏に描きながら歩けば、川から店までは2分ほど。

GRAFTON(五反田)_c0027849_17365923.jpg
 「グラフトン」はビルの地下にある店だ。張りぼてのパブっぽい外装が1階にあるのでここがそうかと思ったのだが、実際はその裏にある階段を下る。

GRAFTON(五反田)_c0027849_17372313.jpg
 フロアは丸テーブルがメイン。といってもテーブルは小さく、ゆっくり食事をしたい人は奥のボックスがいいだろう。また「スナッグ」というボックス席もある。スナッグとは、かつて商談などプライベートな話をするためにパブ内に設けられていた個室のこと。もちろん「グラフトン」がそのためにスナッグを設けたとは考えられないが、ちょっとしたパーティーにはいいかもしれない。

 生ビールのラインナップは「ギネス」、「キルケニー」など日本では定番銘柄。だが私は、めざとく「オールド・スペックルヘンOld Speckle Hen」を発見しパイントでもらう。オールド・スペックルヘンはイギリスでは珍しくないが、私の記憶しているところでは置いてあった日本のパブはここだけだ。GRAFTON(五反田)_c0027849_17373894.jpg
 

GRAFTON(五反田)_c0027849_17375362.jpg 食事は定番のフィッシュ&チップス。イモは、私にとっては塩気が今ひとつ足りない。魚は、長い台形のような切り方がいかにもイギリスの冷凍食品という感じだが、それっぽく見せるためにわざとこういう切り方をしているのか、それとも本当の冷凍食品なのかはわからなかった。


 ビールの値段はほかのパブとほぼ同じだが、料理は1000円以上がほとんどなく、良心的な設定だと思う。

★「グラフトン」
http://www.the-grafton.jp/
# by narrowboat | 2005-08-05 17:42 | 日本でパブ三昧 | Comments(2)
くまのプーさんとボート遊び?_c0027849_16565168.jpg

『イギリス田園彩景』
クリストファー・マックーイ
クミコ・マックーイ、西山真雄訳
銀河出版
1700円+税

 日本人の妻を持ち、日本にも滞在経験のある著者が綴るイギリス田舎暮らしの本。
 イギリスのカントリーサイドを描いた本はほかにいくつもあるが、ナローボートを取り上げたものは数少ない中、この本では1章を使って運河の旅を紹介している。

 彼らがボートをレンタルしたのは、グランドユニオン運河のロンドンに程近いレイトンバザードLeighton Buzzard。現在ここにはハイヤーカンパニーが2社あるが、うち1つは1艘しかボートがない会社なので、彼らが借りたのはもう一方のウィバーン・シッピングThe Wyvern Shippingだろう(このカタカナ標記はちょっと怪しいが)。
 ちなみにレイトンバザードは、大手のアルバチャーチ社が昨年パケットボートにベースを設けるまで、ロンドンから一番近いハイヤーベースのひとつだった。

 さて、著者一行はレントンバザードから、運河博物館でも有名なストークブルーンStoke Bruerneまでを3泊4日でクルーズしている。
 クルーズ中の記述には特に目新しいものはないが、たとえイギリス人の著者といえども、運河に対する知識はそれほど深くはない。というか、イギリス人は確かに趣味に執心する人が多く、そのマニアックぶりは日本人の比ではないのだが、こと自分の趣味の範疇以外のことになると、まったく興味なし、という人が多いのも事実である。
 だから著者に対する批判ということではないのであるが、事実関係を確認しながらチェックしてみよう。

「馬によるボートの曳航スピードは時速2マイル」(P.149)
 なのでロンドンからバーミンガムまでの所要時間は1週間だという。私はスランゴスレンで馬曳きボートに乗ったことがあるが、現代のエンジンつきナローボートと馬による牽引では、速度はほとんど変わらない。いや、むしろ馬のほうが速いくらいなのである。さらに、当時のワーキングボートは昼夜貫徹で走ったから、ロンドン~バーミンガム間は4日ほどのはずだ。いや、夜は動かないという仮定の話では・・・・・とも考えたが、それだと逆に1週間では無理な距離である。

「水門によっては二台縦に入れるものもあるし、横に二台入れるものもある」(P.151)
 横に2台(艘)入れる「ダブルロック」は多いが、縦に並べて入れるというのはほとんどない。
 あるとすれば、ダブルまたはシングルロックで、短いボートの場合、2艘縦に入れることがある。ロックの長さは72フィート(一部例外あり)なので、たとえば40フィートのナローボートと30フィートのプラスチッククルーザーなら、直列電池つなぎのような縦入れも可能だ。

「ボートは1日からでも借りられる」「時間の余裕のある人は。イギリス中部を一周するコース(所要日数1週間)をおすすめする」(P.156)
 ハイヤーカンパニーの中には、一般のナローボートとは別に1日借りの「デイボート」という船を所有している。私も一度使ったが、ベッドが取り払われ、シャワー施設はない。それならわかるが、「1日から」ということは、2日でも3日でもOKということになりはしないだろうか? もちろん、3泊4日のショートブレイクスで借りておいて2日しか使わないというのは自由だが。
 また「イギリス中部を一周するコース」といってもいくつかあるが、1週間で回れるのはウォーリック・リングくらい。これとて、1週間で一周するなら朝から晩までクルーズしっぱなしになる。

 チェックを入れたついでに、ナローボートの章ではないのだが、パブのことを書いた章の中に「フリーハウス」という言葉が出てくる。「最近はフリーハウスといって、一日中開いているパブがある」(P.85)というのだが、パブのフリーハウスとは、特定ビールメーカーのビールしか置いていないパブではなく、オーナーの自由意志でいろいろなビールを置いているパブのことだ。日本でもキリンやサントリーが経営するレストランにはその会社のビールしかメニューにないが、その一方でキリンとサントリー両方置いてある店だってある。フリーハウスとはそういうパブのことだ。

 ここまではいつものようにちょっと意地悪な間違い探しだったが、注目すべき記述もあった。それは「プーの故郷」と題した一章で、あの「くまのプーさん」について描かれているのだが、プーさん好きなら誰でも知っている(?)という「棒投げ」ができる場所がオックスフォード運河にあるというのだ。本当の「棒投げ橋」はイギリス南部に別にあるのだが、ここでは年1回「プーの棒投げ世界選手権大会」が開催されているのだという。
 その大会について、また大会が行われているというオックスフォード運河沿いのリトルウイトナムという村についても、調べてみたが何もわからない。が、あのプーさんが橋の上からナローボートを見下ろしているシーンを思い浮かべるだけでも楽しくなる。

★The Wyvern Shippingサイト
http://www.canalholidays.co.uk/

★くまのプーさんについて
http://www.eikokutabi.com/ukwhatson/uk_guide/features/fairy_tale/pooh.htm
# by narrowboat | 2005-08-05 17:01 | 運河の本、ビデオなど | Comments(0)
『川を知る事典』
鈴木理生
日本実業出版社
1600円+税

イギリスの運河はそんなに少なくないんですけど・・・・・ね_c0027849_18141050.jpg

 鈴木氏といえば『江戸の川・東京の川』(井上書院)という名著中の名著がある。さらに、氏の集大成ともいうべき『江戸・東京の川の水辺の事典』(柏書房)も忘れるわけにはいけない12000円+税という高価なものなのだが、書店で見たとたん「これは買わねば!」と衝動買いに近いお買い上げをしてしまった私である。

 さてこの『川を知る事典』であるが、水の流れである「カワ」とその入れ物である「ガワ」という独自の視点で日本と外国の川について分析を試みている。「カワ」を否定して「ガワ」のみを強調し続けた日本の河川行政の歴史などは、今の日本の川を理解するのに非常に興味深いのだが、ここではいつものようにイギリスの運河についての記述に注目しよう。

 本書でイギリスの水路について触れているのはわずか2ページ。だが、ちょっと誤解を招くような表現、記述になっている。特に問題なのは、掲載された水路図で、イングランドの運河はグランドユニオン、トレント&マージー、ケネット&エイボンの3本のみしか描かれていない。スコットランドはユニオンとカレドニアンの2本で、これはほぼ正解なのだが、イングランドに関しては、この3本にテムズ川があるだけである。
 これにはちゃんと理由があって、氏はその前の項で「小規模な運河は省略してある」と断っている。それもそのはずで、「前の項」とはヨーロッパ大陸の水路の解説になっているのだ。ライン川やドナウ川、それらに接続する運河に比べれば、イギリスの水路など、どれも「小規模」と切って捨てられても仕方がないのかもしれない。
 しかし、そういうのであれば、ヨーロッパ大陸の水路に匹敵するのはテムズ川とカレドニアン運河くらいなものだと思うのだが。その一方で、現在も商用に使われているマンチェスター・シップカナルが抜けている。
 そして、
「イギリスのグレートブリテン島にはほんの数本の水路しか残っていない」
 と結ばれている。

 ちょっとさすがにこれはないなぁ。

 それも、どこぞの無名の人が書いたものではなく、かの鈴木氏の著作なのである。大きな誤解を与えてしまいそうで怖い。 
 せっかく
「小型ヨットで1週間ほどのクルーズを楽しんで、自身でロックを開閉する旅を一度やったらやめられなくなる」(P.272)
 とあるのだから、鈴木氏にもイギリスでぜひナローボートを体験していただきたいものだ。
# by narrowboat | 2005-07-14 18:14 | 運河の本、ビデオなど | Comments(0)