『キュウリの旅』
島袋道浩
小学館
1600円+税
「ナローボートを題材にした絵本がありますよ」
とあるパーティーの席上、そう教えてくれたのは、ライターのYさんだった。
運河関係の本はほぼくまなく網羅していたと自負(?)していた私にも、Yさんのこの一言は衝撃だった。それも一般書籍ではなく絵本?
さっそくネットで調べてみたところ、ちゃんとある(あたりまえか)。
その名も『キュウリの旅』。
なぜキュウリか?
①ナローボートの形がキュウリみたい
②船内でキュウリを漬けてピクルスにする
という2つの理由があるらしい。
まあ先に「ピクルス」があって、「形」は後付けだろう。
でも読んでみると、ナローボートの遅さと、キュウリがピクルス化するスピードがちょうど同じ、ということらしい。
絵本など最近は手にしていない私だが、この絵はどう表現したらいいのだろうか?
色鉛筆であろう細い線で運河や船内の様子を描いている。
もしこれが画用紙に描かれていたら、小学校低学年の絵といわれて納得してしまうに違いない。
一言でいえば「ヘタウマ」。
だが、そこに魅力があるのかもしれない(私には理解できないけれど(@゜▽゜;A)
さて、ここからはいつもの「ツッコミ」。
「作者紹介」によると、
この物語は「ロンドンからバーミンガムまでボートで旅した」ときに着想されたとある。
だが写真に映っているボートはアルバチャーチ社のゲイトンGaytonベースのもの。ゲイトンは、おおざっぱに言うとロンドンとバーミンガムのほぼ中間にある場所だから、もし本当にこの2都市間をボートで行ったのなら、いったんロンドン(もしくはバーミンガム)に出てから再びバーミンガム(もしくはロンドン)へ向かったことになる。物理的には可能ではあるが、1ヶ月くらいかかるのではないだろうか?
ついでに言うと、写真のボート「ゴスホークGoshawk」号は、作者が旅したという2000年7月の約1ヶ月前、私が取材で使ったまさにそのボートである。
もうひとつ、
物語ではアクアダクトを通過したことになっていて、写真が2枚掲載されているのだが、うち1枚はポントカサステ・アクアダクト(スランゴスレン運河)なので、ロンドン~バーミンガム間とは地理的に無関係。
もう1枚は、下に鉄道が通っているところを見るとエドストーン・アクアダクト(ストラトフォード運河)か? もしそうなら、よほど天邪鬼なルートを取らない限り、やはりこのルート上ではない。
もっとも、
これくらいの創作はファンタジーの世界だとして許容範囲かもしれない。
今度私がナローボートに乗ったときは、「ピクルス」に対抗して「しば漬け」でも漬けてみるか。
ぬかみそ持参?
この本はここで買えます。
★英国運河通信